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南田

原稿スピードの話をしたんだけど、私のプロットはこれくらいの骨組みを最後まで全部書ききっていて、あとは肉付けをしていくだけなので実質7割ぐらい終わっています。

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これが、こんな感じになる

 蝉が命を振りしぼるように鳴いていた。
 薬師高校野球部の夏はもう終わったというのに、日差しはいまだ強く、ギラギラとした太陽がグラウンドを容赦なく照りつける。
 今日も記録的な夏日になると天気予報アプリが教えてくれた。
 パシィン、と小気味よい音がブルペンに響く。
 真田は、ふっと息を吐いた。
 今日は球の走りがいい。
 あと何球か投げて感覚を掴んでおきたいところだったが、そろそろ水分補給をしたほうがいい頃合いだろう。
 止めどなくあふれる汗が額を伝う。
 真田は一息つき、帽子を脱いだ。
「秋葉ー、休憩入れよう」
 ミットを構えていた秋葉も頷き、キャッチャーマスクを外す。秋葉もまた、全身汗だくになりながら笑っていた。
「付き合ってくれてありがとな」
「いえ、俺も真田先輩の球受けるの勉強になりますし……いつも練習に付き合ってもらってるのは、俺たちのほうですから」
 そう返す秋葉は、一つ年下とは思えないほどに落ち着きはらっている。さすが次期主将だ。
「あいつらも好きで顔出してんだから、気にすんなよ」
 部活を引退したあとも、こうして練習に参加しているのは真田だけではない。受験勉強で忙しいはずなのに、グラウンドには見知った姿がちらほらと顔を出している。どうしたって放っておけないのだ。去年、自分たちの練習に付き合ってくれていた先輩たちもきっと同じ気持ちだったのだろう。
 二人はベンチに置かれたタオルで額や首筋を拭い、すっかりぬるくなったドリンクを飲みほしながらブルペンを後にした。
「俺、ちょっと顔洗ってくるわ」
「はい。お疲れさまでした」
 体育館のほうを指さすと、秋葉は頷いて一足先にベンチへと戻っていった。
 今日もOBたちから届いたスポーツドリンクがキンキンに冷えているに違いない。ありがたい話だった。
 渡り廊下を横切ったとき、体育館からバスケ部のかけ声が聞こえてきた。
 なんとなく、つい足を止めてしまう。
 夏休みとはいえ、校舎のあちこちから部活に精を出す生徒たちの声があふれている。
 秋季大会を控えた薬師高校野球部は、すでに新体制で動きはじめていた。
 レギュラー争いに向けて猛アピールをする一年生も、後輩に負けてたまるかと威嚇する二年生も、どいつもこいつもギラついていて、頼もしいばかりである。
 監督である雷蔵は「うるさくて敵わねぇよ」とぼやいていたが、その口は嬉しそうににやついているのだから、まったくわかりやすい人だった。
「……でもあの笑い声がねぇと、なーんか調子狂うよんだなー……」
 真田はぽつりと呟き、再び歩きはじめる。
 相変わらずやかましい連中揃いの薬師野球部だったが、なにかが足りない、と感じているのは真田だけではないだろう。
 ――轟雷市が、いないのだ。
 薬師が市大三高に敗れた西東京大会五回戦。あの日から一週間ほど日を空けて真田が野球部に顔を出したとき、すでに雷市の姿は見当たらなかった。
 雷蔵いわく、雷市は自分の実力不足でみんなの夏を終わらせてしまったことに責任を感じ、すっかり塞ぎこんでしまっていたらしい。見かねた雷蔵が、高知にある母親の実家に預けたとのことだった。雷市の両親は雷市が幼いころに離婚しており、母親は遠くで暮らしているのだと、いつか雷市から聞いたことがあった。
 ――あの、雷市が?
 記憶の中の雷市は、いつだってあっけらかんと、明け透けなく、豪快に笑っている。
 去年の夏だってすぐに復活してたじゃねぇか。そんな雷市がそこまで落ちこんでしまうなんて、想像できなかった。 
 もっと早く、ここに来るべきだった。
 雷市にかけてやりたい言葉は山ほどあったし、ばかだよお前は、と頬をつねってやりたかった。雷市に感謝ことすれど、責めるつもりなんて毛頭ない。それは他の部員みんな、誰だって同じ気持ちのはずだった。
 真田は体育館裏にある水道場に辿りつく。
 蛇口を大きくひねって、ばしゃばしゃっと豪快に顔を洗った。決して冷えているとは言いがたい水道水だが、べっとりとした汗を洗い流しただけでもすっきりとする。
 水を含んで額に張りついた前髪をかき上げ、軽く頭を振る。水しぶきが光を反射して小さく光った。
「いつ帰ってくんのかな、あいつ……」
 タオルで顔を拭いながら、晴れ渡った青空を仰ぎ見る。
 その矢先、
「真田先輩!」
 背後から大きな声が飛んできた。
 びっくりして振り返ると、体育館の影からひょっこりと雷市が顔を覗かせていた。
 真田が目を丸くしていると、雷市はぱあっと嬉しそうに笑ってこちらに駆けよってくる。
「ほんとに、真田先輩だ!」
 ずいっと雷市が勢いよく詰めよってきて、思わず仰け反った。戸惑う真田のことなどお構いなしに、雷市は満面の笑みで迫ってくる。 
「俺、先輩が……来たって、聞いて!」
 息を切らしながら、必死に話す雷市の瞳はきらきらとまばゆいばかりに輝いている。
 汗だくで、顔も真っ赤だ。
「おれ、おれ! 嬉しくて、すぐ帰りたかったけど電車、もうねぇって言われて、それで!」
 ぴょんぴょんと跳ねて話す雷市は相変わらず落ちつきがなく、話の内容も要領を得なかった。
 雷蔵から電話で真田のことを聞き、すぐに家から飛び出そうとして母親に止められんだろう、と容易に想像がつく。
 思い立ったら行動せずにいられない雷市のことだ。きっと始発に飛び乗って東京まで帰ってきたに違いなかった。リュックを背負ったままところを見ると、おそらく学校に着くなり部室にも寄らずにここまで走ってきたのだろう。
「……雷市」
 ようやく絞りだした真田の声は、少し掠れていた。
 雷市と話したのは、市大三高に負けた試合以来のことだった。
 あの日、あの試合、自分たちの夏が終わったあの瞬間。あのときの雷市の泣き顔が、今でも頭の片隅にこびりついて消えてくれない。
 誰よりも野球が大好きで、努力家で、仲間思いの後輩に、あんな顔をさせてしまった。俺が、こいつを甲子園に連れていかなきゃいけなかったのに。
 それが、俺の使命だったはずなのに。
 言い表せない苦々しい感情が喉の奥からせり上がってきて、ぐ、と奥歯を噛みしめる。雷市の目を、まっすぐに見つめ返せなかった。
「真田先輩!」
 目を伏せる真田の両手を、雷市がぎゅっと握りしめた。 はっとして、雷市の顔を見る。
「俺、また……先輩と野球ができて、嬉しいです!」
 あどけない笑顔が目の前ではじける。曇りひとつない、くしゃくしゃで太陽みたいな笑い顔だった。
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プロットまでが長くて1~2ヶ月くらいかかるんだけど、そこまで出来上がったらあとは早いみたいな感じです。
プロット中は原稿してるって言わないから、書くの早いって言ってもらえるんだと思う。

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